一風変わった遺書だった。
なぜ「ある阿呆」なのか。蔑まれるべき自分をさらけ出したからなのだろうか。逆に、或阿呆としなければ、書けなかったことなのであり、又、そのようなものであっても描きたかったし、書かざるを得なかったものなのか。
あるいは、そこには、彼の近隣者しかわからない秘密の暴露があったのだろうか。
彼のナイーブな心が、いかに傷ついていたのかを示しているもんなのだろうか。
歴史上には無数の戦争の記録がある。歴史の区切りは戦争に彩られていると言ってもいい。 そこでは将軍の下、無数の兵士が武器を持って戦い、そして死んでいった。記録に残る歴史には、兵士を死なせた将軍のことは書かれているが、死んでいった数えきれない兵士のことは、ほとんど書かれない。もちろ...
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